Re:co Symposium #6 "An Exploration of a Sustainable Value Chain" by Michelle Johnson
前回に続いて、持続可能なコーヒー産業に向けての面白いプレゼンテーションをご紹介したいと思います。
本日のプレゼンテーターは、バリスタの競技会出場経験もあり、バリスタのオンラインサポートシステムの推進者、ジャーナリスト、トレーナーなど幅広い経験をもつMichelle Johnson女史。
今回のテーマはAn Exploration of a Sustainable Value Chainです。
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持続可能なスペシャルティコーヒーを求めて
ここでは持続可能(Sustainability)コーヒーについてお話しします。
持続可能という言葉の中にはフェアトレード、農家に対する公正な給料の支払い、コーヒーがどのように育てられ、いくらで取引のされているかといった透明性を含む内容を示すこともあります。ある大企業がこれに対して大きなプログラムを実施しているのでご紹介したいと思います。
MacDonald
2009年マクドナルドはMcCafeをスタートさせ、どこでも気軽に美味しいコーヒーが届けられるようになりました。商業的な面ばかり懸念されますが、実はそうではありません。2014年にマクドナルドは2020年までに持続可能なコーヒーの提供を100%にまで引き上げると宣言しました。2019年の時点でアメリカのマックカフェでは84パーセントのコーヒーが、世界規模では54パーセントのコーヒーが持続可能なコーヒーを届けています。
ではここでマクドナルドが上げている「持続可能なコーヒーを提供する」とはどういうことを示すのでしょうか。
その当時すでにマクドナルドはアメリカや国際フェアトレード協会、レインフォレストアライアンスと協力していましたが、認証ものは取り掛かりとしてはいいけれど、それではまだ直接農家には大きな影響を与えれていないため不十分であり、より直接的なインパクトを生み出せる取組みが必要だと社長は述べていました。
MacCafe SIP(Sustainability Improvement Platform)
そこでMacCafe SIPと呼ばれるマクドナルドとコンサベーションインターナショナル(国際保護団体)が協力したプログラムを開始しました。
これは認証や認証に代わるのもではありません。農家への良いインパクトを継続的な経過観測をもとに検証していくものです。マクドナルドはこのプログラムを通して、農家の情報を検証する良い方法を見つけました。それはスペシャルティコーヒー業界の中にいる、第三者との協力のもと行われます。彼らの多くは、トレーニングやリソースの調達などに長けており、長期的なコミュニティへの投資をももたらします。
大きくこのプログラムは4つに分けられています。
1つ目は関わる全ての農園の情報を収集し、辿れるようにすること。
2つ目はコーヒーの品質と持続可能性の基準を均一にしていくために、農家と協力すること。
3つ目は定期的にコーヒーの品質と過程を評価すること。
4つ目はそれらを第三者機関が厳しく確認し、正確に報告されて確かな保証がなされるというものです。
今のところ、このプログラムは有効に働いていると思います。
というのも、McCafe Sipプログラムに参加しているロースターは、持続可能なコーヒー生産や生活水準の向上にむけてプログラムに参加している生産者とのリレーションシップを有効に活用できています。
それではいくつか成功した例をご紹介します。
2017年、コロンビアの農園で500人の農家がこのプログラムに参加し、初期収量を2倍にすることに成功しました。またメキシコでは500人の農家が参加し、59万9000本の木が与えられました。そこには6人の農業専門家を派遣し、農家たちは土壌に関する知識を学ぶことができました。
しかしマクドナルドはこれらをただ単に商業活動として捉えているのでしょうか。彼らはさらに大きな活動を行なっていました。
2019年、シカゴの真ん中で彼らは「ミニコーヒーファーム」と呼ばれる、南アフリカの農園を再現したブースを設立しました。そこではコーヒー農園の現状や、1杯のコーヒーが実際どのように作られているのかを知ることができます。
またマクドナルドが、近年の気候変動に対してどのような活動を行なっているのかも知ることができます。マクドナルドは彼ら自身の規模の大きさなどを踏まえ、自分たちには行動を起こすべき責任があると感じています。これは本当に素晴らしいことです。
Collaboration
では専門家である私たちはどうでしょうか。
確かにマクドナルドが行なっている活動はまさに私たちがしたいことです。スターバックスも多額の資金をこのような活動に費やしています。ですが、残念ながら私たちのような専門家たちは、資金力もなく、輸入量も大きくありませんが、実際に私たちは小さなロースターをたくさん作り、個々に対して持続可能性のある農業を広めていってます。たとえその影響は小さくても、こういうのは本当に大切であると感じています。私たちのこのような活動が、実際にマクドナルドのような大企業に対してさらに高い基準を与え、大きな影響を与えているのは確かです。
私自身、スペシャリストたちが同じような事をするないしは、マクドナルドから何かを取る必要はないと思っています。私たちにできるのは、コマーシャルコーヒーとスペシャルティコーヒーでのコラボレーション、多額の資金のある大企業と小さな企業とのコラボレーションではないかと思います。
例えば、ロースターはSIPプログラムに参加するという方法も一つです。また我々も直接農園に行き、農家たちに指導することができ、さらに質の高いコーヒーを作ることができます。すでにインフラはマクドナルドが整えてくれているので、私たちは専門知識を踏まえた上でそれを活用し、さらに良いものを作り上げることができます。残りのニーズはマクドナルドが購入すれば良い話ですから。
話をするだけではなく、行動をすること。私たちのような専門家が求めているのはこのようなコラボレーションで、それこそが私たちのできることです。
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大きいからこそできること、生み出せる影響力、また小さいからこそ始めれることや伝えれること、それぞれの良さをうまく合わせながら、同じ考えのもと取組みを進めることで、より良い世の中につながる一つの具体的な実例であったように感じます。
日本のマクドナルド、マックカフェがどのようなコーヒー豆を取扱っているのか、調べてみると面白そうですね。
持続可能なコーヒー産業の発展という同じテーマでも、色々切り口が異なって勉強になります。今回の方のお話は、他の分野でも適用できそうな具体例もあり、とても分かりやすかったですね。